【震災】《大震災9年》茨城町の吉田さん、福島・富岡に一時帰宅　記者が同行　荒れ果てたわが家に悲痛「原発のばか野郎」

東京電力福島第1原発事故により帰還困難区域が残る福島県富岡町は10日、JR駅周辺の一部地区で避難指示が解除される。かつて町民だった吉田輝男さん(68)=茨城県茨城町=の一時帰宅に記者が同行した。吉田さんの自宅は動物に荒らされ、家財道具が散乱。家は激しく傷んで使い物にならない状態で、現状での帰還の難しさを感じさせた。

■獣医で畜産農家

吉田さんは2015年、茨城町に住まいを新築して定住を決めた。

獣医師であり、富岡町の自宅で40年近く「吉田獣医科医院」を開き、主に牛を診ていた。自身もブランド和牛「双葉牛」(現在は福島牛に統一)を飼っていた。農家の3代目として野菜も作っていた。

今月4日、帰還困難区域内の同町新夜ノ森地区に一時帰宅した。同地区を含んだJR夜ノ森駅周辺は復興拠点に指定されている。

約50アールの敷地にある畑は大人の背丈ぐらいのシノで覆われていた。事故前、吉田さんはここでハクサイやネギなどを生産してきた。

■イノシシの仕業

毎月1回は車で約2時間かけて富岡町に戻り、庭の手入れなどをしている。この日は、チェーンソーでヒノキ2本を切り倒した。敷地の至る所で動物のふんが転がり、地面が掘り返されていた。獣医師の立場から「イノシシの跡だ」と説明した。

「ここが俺の牧場だ。写真を撮ってほしい」。吉田さんの求めで、牛舎前に立つ本人を記者は撮影した。牛舎は空っぽだが、餌の稲わらが残ったまま。牧場には動物の頭骨1個が落ちていた。子牛の物という。11年3月の事故当時、親と子牛を3頭ずつ飼育し、うち1頭は前日に生まれた。6頭を残し、翌日に避難した。約3カ月後に初めて一時帰宅、牛は餓死していた。

庭に見覚えがないという焼酎の瓶が放置されていた。「こんなの前回来た時にはなかった。誰が持ってきたんだろうか」

■情けない気持ち

台所側のドアは下部分のガラスが破られていた。かがんでそこから入ると、室内は食器棚や冷蔵庫が倒れて皿などが散乱し、足の踏み場はほとんどない。ここにも動物のふんがあった。全てイノシシの仕業らしい。あまりの荒れぶりに「(自分たち一家が)悪いことをして夜逃げしたようだ」と笑った。あちこちに灰色っぽいカビが生え、2階の天井の一部は、剥がれてぶら下がっていた。

約1時間の滞在を終え、こう漏らした。「帰るたびに諦めがつく。何か情けない気持ちになる」。自宅解体と除染の時期は未定という。

駅周辺は既に除染が済み整備されて、ロータリー駐車場には真っ白なラインが引かれていた。解除エリアの道路沿いはガードレールとフェンスによるバリケードが設置されていた。真新しい駅舎の仕上げ工事に作業員がいそしんでいた。

横目に吉田さんがつぶやいた。

「きれいなのは人目のつく所だけ。原発のばか野郎」
(斉藤明成)

3/9(月) 14:00 Yahoo!ニュース 657
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200309-00000007-ibaraki-l08

だが、ベントを邪魔して爆発を引き起こした馬鹿がいる
そいつがばか野郎だ