任命拒否された６人の専門は法学、政治学、歴史学、宗教学「中国に軍事技術協力」の根拠薄弱に

菅義偉首相が日本学術会議が推薦した新会員候補を任命しなかった問題は、対象の６人が政権へのスタンスが明確になりやすい社会科学や人文学の専門家だったことが
「恣意（しい）的な任命拒否」との疑念を深める一因になっている。
過去の業績でメンバーを選ぶ仕組みの中で、なぜ専門分野の偏りが生じたのか。
政府は「個別の人事」を理由に詳しい説明を避け続け、識者は「政府が学問を選別、承認した」と批判している。

　日本学術会議法は「優れた研究または業績がある科学者から会員の候補者を選考、首相に推薦する」と規定。
会員候補には「理系」の学者も多く含まれるが、推薦通り任命されている。

　拒否された６人の専門は法学、政治学、歴史学、宗教学。
優れた著作に贈られるサントリー学芸賞、小林秀雄賞などの受賞者も含まれる。
業績が理由なら、なぜ「文系」に偏るのか。

東京慈恵医大の小沢隆一教授は２０１５年、安全保障関連法案の中央公聴会で廃案を主張。
立命館大の松宮孝明教授は１７年の参院法務委員会に出席し「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案を厳しく批判した。

　早稲田大の岡田正則教授は沖縄県名護市辺野古への米軍基地移転を巡り、政府の方針に異議を唱えた。
東大の加藤陽子教授は特定秘密保護法案に反対する学者の会に参加。
いずれの法案、施策も安倍政権が強硬に推し進め、市民から反対の声が上がっていた。

　社会学者の大沢真幸さんは「人文、社会科学系の学問は制度や政策への批判的視点が前提。
政府にネガティブなことを言うのは学者の仕事だ」と指摘。「任命拒否は完全な狙い撃ち。
政権にとって不都合な人物を“えんま帳”のようにリスト化しているのではないか」と話す。

　政府の意向に反すると研究内容が評価されなくなるとの考えが学者の間で広がる恐れがあるとし「政府の介入が文化的水準の低下を招いてしまう」と危ぶんだ。

https://www.sakigake.jp/news/article/20201009AK0012/