- 1 : 2021/11/13(土) 18:05:05.011 ID:O3HabMAG0
- 男「ゲーム買ってきたぞー、さっそくプレイだ!」
男「いけっ! やれっ!」
ザシュッ! ズバッ! ザンッ!
俺はあるゲームをプレイしていた。
勇者を操作し、剣で敵を倒していくアクションゲーム。
勇者の目的は“どんな願いも叶うという聖地を目指す”というもの。まあストーリーはあってないようなものだ。
既にネットでうっかりエンディングのネタバレを見てしまったが、さしてダメージはなかった。
- 2 : 2021/11/13(土) 18:05:30.089 ID:+x3zm+C20
- 期待
- 3 : 2021/11/13(土) 18:06:34.654 ID:nLqaAhmqM
- 支援
- 4 : 2021/11/13(土) 18:07:24.272 ID:mKTxtwRgM
- 名作だった!!乙!!
- 5 : 2021/11/13(土) 18:08:16.006 ID:O3HabMAG0
- 男「それっ!」
ザシュッ!
男「ん、新しいザコ敵だ。女のザコもいるんだな」
男「……ん?」
男(この子可愛くね? 俺の好みにドンピシャなデザインしてるんだけど!)
グアッ! グアッ! グアッ!
男(あ、やべ、そうこうしてるうちに攻撃されまくって勇者のHPが……)
GAME OVER
男「なにやってんだ、俺は……。密かにゲームオーバーにならずクリア目指してたのに」
- 6 : 2021/11/13(土) 18:08:56.836 ID:bATCFvUt0
- アニメ化待ったなし
- 7 : 2021/11/13(土) 18:10:11.867 ID:JKpQ0o1b0
- つづきはよ
- 8 : 2021/11/13(土) 18:11:08.327 ID:O3HabMAG0
- 男「もう一回やろう」
男「こっちから攻撃だ!」
ズバッ! キャッ!
男「あ、悲鳴……。そりゃ上げるに決まってるか。敵の声もフルボイスだし」
男(所詮ザコだし何回か斬れば倒せるはず……)
男(なのに斬れない! こんな可愛い子、斬れるわけがない!)
GAME OVER
男「アホか、俺は……詰まる場所じゃねえだろ」
- 9 : 2021/11/13(土) 18:14:08.795 ID:O3HabMAG0
- 男「もう一回!」
男(心を鬼にして――)
グアッ! グアッ! グアッ!
男(ダメだ、攻撃できない! サンドバッグにされる!)
グアッ! グアッ! グアッ!
GAME OVER
男「また死んだ……」
- 10 : 2021/11/13(土) 18:17:00.652 ID:O3HabMAG0
- 男「とっととクリアしなきゃ! せめてきりのいいボスまで倒したい!」
GAME OVER
GAME OVER
GAME OVER
……
……
惚れた弱み(?)というのは恐ろしいもので、俺は何度となく女ザコに勇者を殺された。
- 12 : 2021/11/13(土) 18:19:31.931 ID:O3HabMAG0
- 何度やっても、何日経っても、結果は変わらない。
GAME OVER
男「うへえ、また死んだ~!」
いっそもうゲーム自体やめた方がいいと思うのだが、女ザコ見たさについついプレイしてしまうのだ。
男「やっぱ可愛い~」
GAME OVER
そして死にまくった。
難しさでゲームが詰んだ経験はあったが、こんなことは初めてだった。
- 13 : 2021/11/13(土) 18:23:46.956 ID:O3HabMAG0
- ある日――
男(ゲームで女ザコに会うだけじゃ満足できなくなってきた……)
男(それなりにプレイヤーのいるゲームだし、あんな可愛いんだもん! 絶対絵を描いてる奴がいるはず!)
男(人気イラストサイト≪ベクシブ≫で検索!)カタカタ
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男「ないのかよ!?」
男(マジかよ。普通一件ぐらいありそうなのに、一人もいないとは……)
男(同じゲームの……たとえば途中で出てくる女の子や女幹部はいくらでもイラストあるのに!)
- 14 : 2021/11/13(土) 18:26:48.645 ID:O3HabMAG0
- 男(だったら、6chでスレを立ててみよう。物好きが一人ぐらい……)
スレッド『○○ってゲームに出てくる女ザコ可愛いよな』
男「……」
男「1レスもつかずに落ちた!」
男(いっそSNSで同志を探そう……)
男「……」
男「一人も見つからねえ!」
俺の心境を喩えるなら、広大な砂漠でありもしないオアシスを求め彷徨う旅人、といったところか。
- 15 : 2021/11/13(土) 18:29:15.533 ID:O3HabMAG0
- 男「ううう……どうして女ザコなんか好きになってしまったんだ」
男「しかも、マジ惚れだよ、マジ惚れ」
男「生身の人間だって、こんなに好きになったことないのに……」
男「ううう……」
男「寝よう……」ゴロン
男(ああ……女ザコに会いたいよう……)
…………
……
- 16 : 2021/11/13(土) 18:32:20.465 ID:O3HabMAG0
- 「起きて」
男「……むにゃ?」
「ほら早く」
男「だ、誰だ……」
女ザコ「おはよう」
男「んん!?」
俺は一人暮らしで、誰かに起こされるなどありえない。
もし誰かに起こされたら、真っ先に逃げるなり叫ぶなりするべきなのだが、俺はすぐ分かった。
目の前にいるのは、あの「女ザコ」だと。
- 17 : 2021/11/13(土) 18:35:10.679 ID:O3HabMAG0
- 男「これは……夢か?」ギュッ
男「いでえ!」
女ザコ「なにをしてるんだ?」
男「あ、いや……」
男(夢じゃない……。俺が惚れて、あんなに会いたがってた女ザコが現実に……!)
男「どうしてここに?」
女ザコ「何をいってる。お前が呼び出したんじゃないか。私に会いたいって」
男「呼び出したって……」
女ザコ「私はゲームの住民だが、お前からの念が凄まじくて、こっちの世界に来てしまったのだ」
男「あ、そうだったんだ」
- 18 : 2021/11/13(土) 18:36:46.892 ID:+x3zm+C20
- age
- 19 : 2021/11/13(土) 18:38:57.063 ID:O3HabMAG0
- 男「だけど……」
女ザコ「なんだ?」
男「俺の想いが通じて君を呼び出せた。ここまではいい。だけどこんなことが本当に起こるなんて……」
男「これが成立するなら、世界中で同じようなことが起きてなきゃおかしいんじゃ……」
女ザコ「おそらくそれはこういうことではないか?」
男「?」
女ザコ「例えば、他のキャラは複数の人間に想われている。その中の誰かだけのところに行くことはできない」
女ザコ「しかし、私のことを想ってくれたのは、世界中でお前ただ一人だけだった」
女ザコ「だから、呼び出されることができたのだ」
男「君が超マイナーキャラだったから呼び出せたってことか」
女ザコ「そういうことだな」
男(少し複雑だが、今この時ほどマイナーキャラ好きでよかったと思ったことはない)
- 20 : 2021/11/13(土) 18:41:53.669 ID:O3HabMAG0
- 男「まあ、とにかく君は具現化して、俺に会いにきてくれた!」
男「最高だぁ!」バッ
女ザコ「気安くさわるな」バシッ
男「はぐぅ!」
女ザコ「呼び出されはしたが、好きなようにさせてやるとはいってない」
男「す、すんません……」
男「じゃあ、眺めてもいいですか」
女ザコ「それぐらいならいくらでも」
男「……」
男(ああ、美しい……。ゲームキャラから実在の人物になったのに、その違和感が全くない……)
- 21 : 2021/11/13(土) 18:43:40.392 ID:O3HabMAG0
- 男「とりあえず、なんか食べる?」
女ザコ「ああ、食べる」
男「じゃあ、パンでも……」
女ザコ「……」パクッ
女ザコ「うん、おいしい」
男「ホント、よかった!」
女ザコ「もっと食べたい」
男「いいよ、食べさせてあげる」
- 22 : 2021/11/13(土) 18:48:01.773 ID:O3HabMAG0
- ……
男「じゃあ、仕事行ってくるよ」
女ザコ「行ってらっしゃい」
男(女ザコと同棲することになるなんて夢みたいだ!)
~
男「ふんふ~ん」
同僚「お? なんか今日やけにテンション高いな」
男「まあね」
同僚「女でも出来たか?」
男「出来た……というより“出てきた”かな」
同僚「なんだそりゃ?」
- 23 : 2021/11/13(土) 18:51:21.588 ID:O3HabMAG0
- 男「ただいまー」
女ザコ「お帰り」
男「ん、この匂いは……」
女ザコ「私も料理を作ってみたんだ」
男「え、作れるの!?」
女ザコ「どうやら作れたようだ」
男「“ようだ”ってまあいいや。いただきまーす!」
女ザコ「どうだ?」
男「おいしいよ! うん、グッド!」
- 24 : 2021/11/13(土) 18:53:37.793 ID:JKpQ0o1b0
- 何のゲームだよ?
- 25 : 2021/11/13(土) 18:54:08.491 ID:O3HabMAG0
- 男「いやー、幸せだな~」
女ザコ「私はゲームキャラなのにか?」
男「もちろんさ。あんなに恋焦がれてたんだから」
女ザコ「ところで、私がいたゲームはやらないのか?」
男「ん、いい、いい。君が現れてくれたんだもん。あれはもう詰みゲーから積みゲーになったよ」
女ザコ「そうか……」
男「それじゃ今後ともよろしく!」
女ザコ「ああ、よろしく頼む」
- 26 : 2021/11/13(土) 18:55:38.773 ID:+x3zm+C20
- そろそろ悪雲か…?
- 27 : 2021/11/13(土) 18:58:08.414 ID:O3HabMAG0
- ……
男「今日は休みだし、出かけない?」
女ザコ「私が……いいのか?」
男「ずっとその服でいるのもなんでしょ。俺が服買ってあげるよ」
女ザコ「お前がいいのならば、同行しよう」
男「よっしゃ! それじゃレッツゴー!」
女ザコ「れっつごー」
男「合わせてくれてありがとう」
女ザコ「いや、別に……」
- 28 : 2021/11/13(土) 19:02:04.672 ID:O3HabMAG0
- 女ザコ「どうかな?」
男「よく似合ってるよ!」
女ザコ「じゃあ、これ……」
男「うん、買おう!」
女ザコ「お金は大丈夫なのか?」
男「趣味はゲームしかなかったし、そのゲームも大したレベルじゃないし、貯金はあるんだ」
女ザコ「ならいいのだが」
- 29 : 2021/11/13(土) 19:04:47.581 ID:O3HabMAG0
- 男「ここのジェラートはおいしいんだ。一緒に食べよう」
女ザコ「うん」パクッ
男「どう?」
女ザコ「おいしい!」
男「でしょ」
女ザコ「うん、おいしい!」パクパク
男「ゆっくり食べないと頭キーンってなるよ」
女ザコ「う!」キーン
- 30 : 2021/11/13(土) 19:05:55.458 ID:qnWczPLk0
- ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~END~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
- 31 : 2021/11/13(土) 19:05:57.793 ID:qXw/Gxtn0
- 気に入ったモブとか雑魚を嫁にできるゲームやりたい
- 32 : 2021/11/13(土) 19:09:11.478 ID:O3HabMAG0
- 女ザコ「質問がある」
男「なんだい?」
女ザコ「私はしょせん倒されるだけの存在だ。なのになぜお前はここまでしてくれる?」
男「決まってるだろ。俺は……君に惚れたからだよ」
女ザコ「……!」
女ザコ「ならば私も……もしかしたら、お前のことが好きになってしまったかもしれない」
男「え」
女ザコ「ほんの少し。ほんの少し、だがな」
男「ほんの少しでも嬉しいよ。本来なら、君と話をすることすらできなかったんだから」
女ザコ「だが……」
男「?」
女ザコ「いや、なんでもない。帰ろう。少しでもこの生活を楽しんでいたいから……」
- 33 : 2021/11/13(土) 19:11:13.219 ID:O3HabMAG0
- ある日――
男「ったく、終業時間直前に『これやっといてくれ』なんて頼むの反則だよな~」
男「今日は二人で鍋やるって決めてるし、早く帰ろう」タタタッ
「……」ギロッ
男「な、なんだ?」
男(男が、俺をものすごい殺気で睨んできてる……なんなんだ、あいつ。さっさと帰ろう……)
タタタッ…
- 34 : 2021/11/13(土) 19:14:15.362 ID:O3HabMAG0
- 男「ただいま……」ハァハァ…
女ザコ「息を切らしてるが、どうした?」
男「怖い男に会ったんだ」
女ザコ「怖い男?」
男「俺を物凄い目で睨んできて……。だけど、どこかで見たことあるような……」
女ザコ「そうか、やはり来てしまったか」
男「え?」
女ザコ「いつか奴が来ることは分かっていた」
男「奴? え? まさかゲーム内に恋人がいたとか?」
女ザコ「そうじゃない。お前を睨んだ奴の正体はおそらく――」
- 35 : 2021/11/13(土) 19:15:19.167 ID:+x3zm+C20
- wktk
- 36 : 2021/11/13(土) 19:17:07.723 ID:O3HabMAG0
- 「俺だ」
男「わっ!? さ、さっきの……! どうやってここに……!」
女ザコ「……」
男「こいつ何者だ!? 君、知ってるのか?」
女ザコ「お前もよく知ってるはず」
男「え!?」
女ザコ「こいつは……勇者だ」
勇者「……」
男「あ……!」
- 37 : 2021/11/13(土) 19:20:18.466 ID:O3HabMAG0
- 勇者「俺の用件は分かってるな?」
女ザコ「ああ……」
勇者「お前を殺しにきた」
女ザコ「……」
男「ちょ、ちょっと待て! なんでそんな……」
勇者「なんで? 分からんのか?」
勇者「お前がこいつに恋心を抱いたせいで、俺は何度も何度も死ぬはめになった」
勇者「挙げ句、ゲームは放置され、俺は永久に目的を達することはできなくなった」
勇者「その怨念が、俺をこうしてこの世界に具現化させたのだァ!」
男「あ、あああ……」
男(たしかに俺は何度もゲームオーバーになり、ゲームをクリアせず積みゲーにしちゃった……)
男(俺のせいなのか……)
男「ゲームの女ザコにマジ惚れしちゃった……どうしよう」
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