歌舞伎町に行くんだけど、オススメスポット教えてくれ

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（惜別）片岡秀太郎さん　歌舞伎俳優・人間国宝

■上方匂う女形、柔和で情濃く

　５月２３日死去（慢性閉塞〈へいそく〉性肺疾患）　本名・片岡彦人（よしひと）　７９歳

　京都や大坂で発展した上方歌舞伎を受け継ぎ、愛し抜いた女形だった。

　楽屋へ取材に行くと、ミカンやお茶を出して「足崩してええよ」と記者を気遣った。演目や役どころを柔らかい関西弁で丁寧に教えてくれる。後日、上方の花街のおかみを舞台で演じる姿を見て驚いた。楽屋の雰囲気そのままで、「自然体に演じるだけ」という言葉通りだった。

　「あの上方独特の味は教えてできるもんじゃない。貴重な芸の持ち主でした」。三つ下の弟で、人間国宝の十五代目片岡仁左衛門さん（７７）は話す。「新口村」のかれんなヒロイン梅川や、「封印切」のおえんのような花街のおかみ、気品と気丈さのある「道明寺」の老女覚寿。「どれもすてきだったなあ」と次々に印象深い役を挙げた。

　十三代目仁左衛門の次男として、１９４６年に初舞台を踏んだ。幼い頃は名子役として知られ、「とにかく頭がよく、人の名前や誕生日をすぐ覚えた」と仁左衛門さんは言う。２人は８人きょうだいの６番目と７番目。「ままごとではお兄ちゃんがお父さん役で僕が子ども役。ずっと後ろをくっついてね」

　戦後しばらく、関西の歌舞伎界は低迷期が続いた。興行は減り、多くの役者が東京へ移る中、父とともに関西に残った。その後は、自主公演を企画するなどして再興に奔走し、上方役者の矜持（きょうじ）をみせた。

　もう一つ、力を注いだのは後進の育成だ。片岡愛之助さんを養子に迎え、９７年に開設した「松竹・上方歌舞伎塾」では、主任講師として一般家庭出身の若者の指導に当たった。

　１期生の片岡千壽（せんじゅ）さん（３９）は、その教え方に衝撃を受けたという。せりふを現代語で説明し、女形や立ち役（男役）、お年寄りまで、すべての役柄を演じてみせた。「近くで学びたくて、迷わず弟子入りした。旦那のような情の濃い上方の女形は他にいない」

　「若い人を支える。それが私の今の生き方」。２０１９年、人間国宝に選ばれた会見で、そう語った。１２人の卒塾生はいま、上方の役者として舞台で活躍している。

　昨年１２月、体調不良ながら京都・南座の「吉例顔見世興行」に２日間だけ出演した。９歳から毎年のように立ち、自ら「夢のような晴れ舞台」と言う場で、自身の持つ最多出演記録を７１回に更新して大きな拍手が送られた。それが、最後の舞台となった。