【TOKYO2020】揺れるオリパラ学校観戦、「半世紀に1度」で現場苦慮

東京・葛飾区の区立白鳥小学校でオリンピックいついて学ぶ生徒。６月撮影（２０２１年　ロイター/Irene Wang）

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［東京　６日　ロイター］ – 東京五輪の観客上限見直しが現実味を帯びる中、特別枠の「学校連携観戦プログラム」も揺れている。１００万人以上の子どもと教師が観戦を予定していたが、新型コロナウイルスや熱中症への懸念を理由に中止や規模を縮小する自治体が相次いでいる。開会式まで２０日を切り、まだ方針を決めていない自治体にある学校の関係者は、日本で半世紀ぶりに開く夏季大会を生徒に見せたいという思いと、安全・健康リスクの狭間で苦慮している。

＜「公共交通機関で」が参加条件＞
東京・葛飾区の区立白鳥小学校の階段には、過去の五輪の大会名と開催年が１段ごとに貼られている。６月下旬、給食を終えた６年生の教室では、生徒の１人がパラリンピックについて学習したことスライドを使って発表していた。

２０１３年に東京大会の開催が決まって以降、都などは「オリンピック・パラリンピック教育」を推進してきた。ボランティア精神や障碍者に対する理解、スポーツへの関心、国際感覚などを高めることを目標に、大会の観戦をその集大成と位置付けてきた。延期が決まる前の２０２０年１月時点でチケット約１２８万枚の購入申し込みがあった。

全校生徒がパラリンピックを観戦する予定の白鳥小学校は、競技会場や道程を入念に確認してきた。田代淳校長は現在、様々なリスクを勘案すると観戦は難しいと考えている。特に懸念しているのは、会場まで公共交通機関を使わなければならない点。教員が下見したところ、学校から有明アリーナまで片道約２時間かかった。迷子になる可能性や熱中症の危険もある。貸し切りバスなら問題はクリアできるが、一般客と同様に公共交通機関を利用することが参加条件だ。

大会組織委員会や国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）は６月２１日、五輪の観客数上限を収容能力の５０％・１万人と決めた。学校連携は対象外だが、それ以降、参加を見送る自治体が相次いでいる。そのうちの１つ、目黒区の教育委員は翌２２日に不参加を決めた。担当者はロイターの取材に対し、「公共交通機関の利用による観戦は、新型コロナ感染症や熱中症の不安はぬぐえない」とした。

組織委員会は、不参加の自治体数はまだ確定していないとしている。だが、コロナの感染再拡大が明らかになり、観客上限の見直しは必須との観測が広がる中、相当数の自治体がキャンセルを決める可能性がある。

白鳥小学校の場合、葛飾区の決定を待っている状態だ。「子どもたちの夢を実現させてあげることができるように準備を整えているが、もしかするとクリアできないリスクが残ってしまうかもしれない。その場合には観戦しない、という判断をすることもある」と、田代校長は言う。「非常に悩んでいる」

空手を習う９歳の息子が白鳥小学校に通っている母親は「コロナがなかったら、ものすごく嬉しいことだった」と話す。「でも、まだワクチン接種もほとんどの大人たちが終わっていない、子どもたちはまだ接種していない状況なので、ちょっと難しい」と語る。

＜計画を大幅に縮小＞
学校の中には、規模を縮小して参加すると決めたところもある。小学校から高校まで、知的障害を持つ生徒が通う千葉・東金市の県立東金特別支援学校は、コロナ感染のリスクを考え全校生徒による観戦は断念した。しかし、支援学校はバスの利用が認められていることから１５人の生徒に絞り、８月３日に千葉市の幕張メッセで行われるレスリングを観戦する予定だ。

同校の唐鎌和恵校長は「基礎疾患を持っている子どももいるし、健康面で心配な子どももいるので、全校を連れて行くことは難しいと判断した」と説明。「オリパラに向けての取り組みを通して、障害があってできないと思っていたことが、やれるんだな、とか工夫次第で可能になる、という思いを持った子が増えている。これはオリパラが終わった後も、今後につながる」と話す。１０人程度の教員が引率し、長時間の滞在とならないよう、昼食を取らず午前中の１時間半程度だけで学校へ戻る計画だという。

「５年間にわたってオリンピック・パラリンピック教育を行ってきた。この大きな大会を目前に、子どもたちには本当の空気感、会場で選手が躍動する姿を見させてあげたい」と、白鳥小学校の田代校長は言う。「一生に１回、あるかないかのチャンス。思い出に残るような体験はぜひさせてあげたいというのが教師としての気持ちだ」

（宮崎亜巳記者、Ju-min Park記者）