今日、初めて新宿区歌舞伎町に行くんだけど　オススメスポット教えてくれ

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「わきまえない女」伝説ここにあり！奴の小万とは何者か

「まだまだ勝手に関西遺産」
作家の織田作之助が小説「木の都」で書いた、天王寺七坂の一つ、口縄（くちなわ）坂（大阪市天王寺区）。主人公の「私」は坂道を上ってくる制服の女学生を目にして夕陽（ゆうひ）を浴びたように顔を赤らめた。かれんな少女を思わせるが、この坂に眠る、ある女性の伝説はそんな想像を大きく裏切る。
16歳で男たちを・・・
「盗人二人来かゝり。やがて雪女（ゆきじょ）が櫛（くし）等を奪ひ去らんとせしを。雪女すかさず彼が手を捕ると見えしが。さしもいかめしき男共を。左右に投げ出だし」
ころは江戸時代、天王寺参りで口縄坂を歩く16歳の雪が、男たちを投げ飛ばした。うわさは広まり、1748年に道頓堀の豊竹座で初演された「容競出入湊（すがたくらべでいりのみなと）」という人形浄瑠璃に、ならず者をたたきのめす奴（やっこ）の小万が登場。モデルになった雪自身がやがてその名で呼ばれるようになった――。文豪・幸田露伴による大正時代の著書「日本史伝文選」に、こんな話が紹介されている。
ほんまにそんな女性が？しかしなんと、1802年に関西を訪れた戯作（げさく）者の曲亭馬琴は旅行記「羇旅漫録（きりょまんろく）」で尼になった小万に会った、とつづっている。もとは大坂の豪家の娘とあり、若き日のこんなエピソードまで残されている。
「みづから誓ふて嫁せず。夫をむかへず」。
結婚を拒み、顔に墨を塗った上に白粉をつける奇妙な化粧でまちを歩いたとか。ますます謎めいてきた
歴史上の日本女性をフェミニズムで読み解く著書「『姐御（あねご）』の文化史」で、小万を取り上げたフリー編集者の伊藤春奈さん（43）はこう話す。「経歴は諸説ありますが、大坂に実在した江戸時代のカッコいい女性の代表格で、江戸でも大変人気がありました。女性が抑圧された時代に、規範に逆らって生きた姿が喝采を浴びたのでしょう」
小説などの読み物、映画、演劇。エンタメ化され、様々な筋書きで、義に厚く腕っぷしの強い奴の小万は描かれてきた。令和のいまも上方の講談や落語で新たな姿が語られている。この春には、伝楽亭（同市旭区）で講談師の旭堂南華（きょくどうなんか）さん（58）が披露した。
上方講談で新たな姿も
小万の幼なじみの娘が家の没落で身を売られかける。そこを救った米仲仕の親方に、小万たちは弟子入り。商いを興し、やがて飢饉（ききん）に苦しむ人々のために立ち上がる――。才覚と志を持ち、まっすぐに生きる大坂の女が輝くストーリーだ。聴き入っていた50代の女性は「こんな魅力的な女性の物語があったなんて。森喜朗元首相の女性蔑視発言にはイライラさせられたけど、スカッとしました」と興奮気味だった。
この講談をつくったのは、本コーナーの先祖にあたる「勝手に関西世界遺産」の筆者の一人でもあった講談師の旭堂南海さん（57）だ。「女なのに男のように腕っぷしが強いという話は時代に合わないと思いました。お金はなんのために使うべきか。男性が気づきにくい目線を小万に込めたつもりです」。そうか。奴の小万は、その時代の女性ヒーロー像を映す鏡か。いわば、ナニワが生んだ永遠の「わきまえない女」。ワクワクするその自由な物語は、まだまだ進化するはずだ。（篠塚健一）
松井今朝子さん「男社会に組み込まれずに」
歌舞伎などで知っていましたが、調べてみたら大坂の豪商の「お嬢」。美人で大柄で、武勇も文化的な教養も優れていた。関西のカッコいい女ですよ。でも、最終的には尼になりました。私は世捨て人になる姿に共感して、小説「奴の小万と呼ばれた女」を書いたんです。男社会のなかで認められて地位を築く女の生き方もあるけど、そこに組み込まれない女の生き方もある。小万は男性の何にガッカリしたのか。今の時代にも通じると思います。